ACO Japan
世界に鮮烈な新風を送り続ける南半球のオーケストラ
アンサンブルに息づく日本との「深いつながり」とは?
オーケストラ・プロフィール
ACO(オーストラリア室内管弦楽団 | ACO)は1975年創立、オーストラリア・シドニーを拠点に活動中のオーケストラです。1990年、リチャード・トネッティを芸術監督に迎えて以来、クラシック界のニューウェーブとして新風を送り続けています。
ACOの大きな特徴は立奏スタイル。メンバー17名がソリストのような自由度を持つと同時に、アンサンブルとして精度の高い斬新な演奏を誇っています。国内外でのツアーを積極的に展開、国内だけでも年間100回にわたる公演を行っています。海外ではヨーロッパ、アメリカ、アジアの45か国、271都市で演奏会を開催。一方で、さまざまな 若手の才能育成プログラム、小学校での音楽プログラム、先住民アボリジナル・ピープルの住む地域へのアウトリーチなど国内での活動も多岐にわたります。
2005年よりデジタル映像のコンサートシリーズを展開、音楽と映像による真に芸術的なコラボを探究中。各種動画を広く配信しています。
2022年、ACOはシドニー湾やハーバーブリッジを一望できるオペラハウスに近いウォルシュベイの埠頭に、本拠地を移転しました。20世紀初頭に建てられた州の文化遺産でもある湾岸倉庫を改築、ユニークな立地に新スタジオを創設。専用パーフォーマンス・スペースでは、メンバーによるリサイタルやトークを開催しています。ACO新たな時代の開幕です。
演奏曲目について
ACOのプログラミングは、古くはバッハやヘンデル、ヴィヴァルディのみならず、ラモーやコレッリ、C.P.E.バッハ、と多様なラインナップのバロック音楽に始まります。古典派からロマン派にかけてのハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンやシューベルトをとても大切にし、20世紀のブリテンやショスタコーヴィチ、さらにはアルヴォ・ペルトやジョン・アダムズといった現代の作曲家たち、そしてときにはピンク・フロイドやマイルス・デイヴィスの作品を盛り込むなど、大胆で創意あふれる選曲を誇っています。ベートーヴェン「クロイツェル・ソナタ」、ラヴェル「弦楽四重奏曲」、ドヴォルザーク「アメリカ」といった室内楽の名作をオーケストラ版に編曲して取り上げるのもACOの得意とするところです。
サトゥ・ヴァンスカ
後藤和子
ヘレナ・ラスボーン
ステファニー・ファランズ
ティモ=ヴェイコ・ヴァルヴェ
マクシーム・ビボー
オーケストラ・メンバー
ACOはヴァイオリニストで指揮者、作曲家でもあるトネッティ芸術監督のもと、日本を含む多様なバックグラウンドの17名のアーティストで編成されています。
ヘレナ・ラスボーン(ヴァイオリン)、サトゥ・ヴァンスカ(ヴァイオリン)をはじめ、ティモ=ヴェイコ・ヴァルヴェ(チェロ)、ステファニー・ファランズ(ヴィオラ)、マクシーム・ビボー(コントラバス)、後藤和子(ヴァイオリン)ら、オーストラリアのみならずヨーロッパやアジアの諸地域をルーツとする個性的で情熱あふれる演奏家たちを擁します。
Richard Tognetti リチャード・トネッティ ― 芸術監督
1965年オーストラリア、キャンベラ生まれ。
幼少期よりウィリアム・プリムローズ(1904 - 82年 世界屈指のヴィオラ奏者。NBC交響楽団元首席奏者)に師事。シドニー音楽院にてアリス・ウォーテン、ベルン音楽学校(スイス)でイゴール・オジムに学びます。1989年ベルン音楽学校を首席卒業し、Tschumi 音楽賞を受賞。同年ACOに入団し、1990年弱冠25歳で芸術監督に就任しました。
バロック・古典派から現代音楽まで、ジャンルにとらわれず、ときに作曲家・編曲家としての創意を生かしたその幅広いレパートリーは常に大きな注目を集めています。
指揮者・ソリストしての活動は、豪主要オーケストラでの演奏はもちろん、エイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団、エンシェント室内管弦楽団、スロベニア交響楽団、ボストン・ヘンデル・ハイドン・ソサエティ楽団、香港フィルハーモニー管弦楽団、カメラータ・ザルツブルク、タピオラ・シンフォニエッタ、アイルランド室内管弦楽団、ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団、ノルディック室内管弦楽団などで活躍。また、リゲティのヴァイオリン協奏曲、ルトスワフスキの「パルティータ」をオーストラリアで初演したことでも知られています。
2008年から2015年まで、スロベニアのマリボル音楽祭の芸術監督を務めました。
作曲活動では、ハリウッド映画『マスター・アンド・コマンダー』(2003)、『ストーム・サーファー』(2012)のサウンドトラックを合作したほか、ショーン・タンの絵本『レッドツリー』にインスパイアされたアルバムを制作。
2017年にはドキュメンタリー映像作家のジェニファー・ピーダム監督とコラボレーション。日本でも話題を呼んだ映画『クレイジー・フォー・マウンテン』(2018年)のサウンド制作を手掛け、演奏はACOが行いました。
1999年には豪政府よりNational Living Treasure(人間国宝)に認定されます。2010 年、士官勲章、豪州の3大学より名誉博士号を授与されたほか、2017年にはオーストラリアで長期にわたって活躍中のステージ・パーフォーマーに贈られるJCウィリアムソン賞を受賞しました。
こちらは、現代作曲家アルヴォ・ペルトの「タブラ・ラサ」です。ご堪能ください。
アルヴォ・ペルト:タブラ・ラサ(部分)
– ACOスタジオ・キャストよりプレビュー映像(2021年)
エマニュエル・パユとACO(オペラハウス、2017)
共演者たち
これまで、ユニークでクリエイティヴなアーティストや音楽家とコラボレーションを行ってきました。以下はその一例です。
・ピエール=ロラン・エマール(ピアノ)、エマニュエル・パユ(フルート)、スティーヴン・イッサーリス(チェロ)、ドーン・アップショウ(ソプラノ)、オッリ・ムストネン(ピアノ)、ブレット・ディーン(ヴィオラ/作曲家)、イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)、吉野直子(ハープ)、大萩康司(ギター)、ほか
・現代音楽 ― ニール・フィン、ジョニー・グリーンウッド、ケイティ・ヌーナン、バリー・ハンフリー、ミャウミャウ、ほか
・ビジュアルと音楽のコラボレーション ― マイケル・ルーニック、ビル・ ヘンソン、ショーン・タン、ジョン・フランク、ジェニファー・ピーダム、ほか
コラボのスタイルは、今やACO の代名詞となっています。
ACOの名器たち
ACOのメンバーにはストラディヴァリウスやグァルネリなど多くの歴史的名器が篤志家により提供され、日々の演奏活動で使用されています。これだけの名器を所有する楽団は世界的にも珍しく、稀少なコレクションとも言えるでしょう。ACOのサウンドを創り出すさまざまな楽器を一部紹介します。
(カッコ内が使用しているメンバー〈2022年10月現在〉)
ヴァイオリン
1743年製 グァルネリ・デル・ジェズ(リチャード・トネッティ)
1732年製 ストラディヴァリウス(ヘレナ・ラスボーン)
1726年製 ベルジョルノ・ストラディヴァリウス(サトゥ・ヴァンスカ)
1728/29年製 ストラディヴァリウス(マーク・イングウェルセン)
1590年製 ブラザーズ・アマティ(イリヤ・イサコヴィッチ)
1860年製 ジャン=バティスタ・ヴィヨーム 後藤和子
チェロ
1616年製 ヒエロニムス・アントニオ・アマティ(ティモ=ヴェイコ・ヴァルヴェ)
1729年製 ジュゼッペ・グァルネリ・フィリウス・アンドレア(ジュリアン・トンプソン)
1846年製 ジャン=バティスタ・ヴィヨーム(メリッサ・バーナード)
コントラバス
1585年製 ガスパロ・ダ・サロ(マクシーム・ビボー)
ACO ― 日本との特別な深いつながり
ACOと日本とのつながりは1980年1月の東京公演に始まり、以来、東京、大阪、福岡、埼玉、長野、石川、北海道の主要都市にてさまざまなプログラムで演奏活動を行ってきました。2003年の東京公演(紀尾井ホール)には、徳仁皇太子同妃両殿下(当時)が来場され、メンバーと懇親を深める場面も。2018年にも東京公演(よみうり大手町ホール)を行い、桐朋女子高等学校音楽科にてメンバーによる弦楽アンサンブルの特別レッスン、東京芸術大学では、コントラバスのマスタークラスを開催しました。
またトネッティはこれまで毎年、北海道ニセコ町をメンバーと訪れ、同町のホテルなどでミニコンサートを行い、ローカルの人々と親交を温めてきました。
トネッティの日本との出会いは、少年時代に遡ります。シドニー南部の港町ウーロンゴンにて、11歳の時にウィリアム・プリムローズ氏とヒロコ・プリムローズ氏に指導を受けました。両氏はオーストラリアで初めてスズキ・メソードを取り入れた指導者としても広く知られています。
NSW州ロバートソンにて、スズキ・メソードの講習風景(1977) ウィリアム・プリムローズ氏とヒロコ・プリムローズ氏、クミコ・サワ氏(ピアノ)
ヴァイオリンをスズキ・メソードで習得したメンバーとして、首席ヴァイオリンのヘレナ・ラスボーン、サトゥ・ヴァンスカ、後藤和子も特筆すべきでしょう。ラスボーンは5歳よりロンドンのスズキ・グループで、ヴァンスカは3歳より滋賀県大津市の教室にて、後藤も3歳より東京都の町田教室にて始めました。
その他のメンバーにも、スズキ・メソードで研鑽を積んだ奏者がいます。
首席ヴァイオリンのサトゥ・ユリコ・ヴァンスカは徳島県生まれ。フィンランドより宣教師として徳島に赴任していた両親のもと、4人の兄弟と徳島で育ちました。現在も日本との繋がりは深く、日本語も堪能です。
後藤和子は、桐朋学園大学音楽科を経て渡米、ジュリアード音楽院を卒業しました。ACOには1998年に入団。また1995年より小澤征爾氏が総監督を務めるサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーとしても活躍しています。
2016年、日豪友好協力基本条約記念の外務大臣表彰を受賞しました。
ACO Digital – 音楽と映像のコラボレーション
ACOはこれまでデジタル技術を駆使したコンサートシリーズや動画配信を行ってきました。以下はその一例です。①と②はどなたでも自由にご視聴になれます。
① ACO ユーチューブ チャンネル
2008年開設。420本以上の動画を擁する充実のコンテンツ。常時更新されています。
② ACO ホーム・キャスト
ACOの各メンバーによるミニ演奏会。コロナ禍によるロックダウンをきっかけに、あらゆる場所からの発信が始まりました。
③ ACO スタジオ・キャスト
新感覚なオンデマンド特別演奏会。多様なプログラムを配信中。
各作品のタイトルにはACOの自由で斬新な音楽観、幅広いレパートリーが反映されています。ACOとプロの映画制作チームが企画から撮影、編集まで1作品に約3か月をかけて作り上げた「音楽映画作品」をご堪能ください。
後藤和子 ACOを語る
リチャード・トネッティ&サトゥ・ヴァンスカ 日本への思い
2023年10月の東京ツアーを前に、お二人にインタビューしました。
日本でみなさんにお会いできるのを楽しみにしています。